
CD Albums 父と子
PSCR-5275
- 父への遺言
御無沙汰でした あれから一年
二人の子供達も 元気でいます
夏が来るたび 小さくなった
貴方の後姿は 元気でしょうか私は時々 あなたと旅した
遠い昔を想い出します
大きな背中を追いかけながら
貴方は強いと感じていました電話もせずに 手紙も出さず
心配ばかりでしょうが 許して下さい
散歩がてらの 信号待ちで
老人が一人寂しそうに立って居ました貴方は時々 私と旅した
遠い昔を 想うでしょうか
残り少ない 日々の暮らしで
貴方はなにを感じていますか風が出てきた 丘の上から
横に座った 息子と二人
力の限りに 心の花を
貴方に向かって 投げてみました
- 青年の樹
一人心に別れを秘め
何も知らずに眠る貴方の
部屋の灯りに眼をやれば
憧憬に旅立つ足がすくむ私の二十歳の祝いにと
貴方が庭に立たずみ静かに
やせたその腕で土をかけた
青年の樹よ今をのがせば夢などに
若さをかける時は二度とない桜ひとひら雨に散る
冬まだ明けぬ春に散る
落ちたひとひら風に舞い
何処の土に埋もれ終るやら私の二十歳の祝いにと
貴方が庭に立たずみ静かに
やせたその腕で土をかけた
青年の樹よ老いた二人の行く先を
緑やさしく包んでおくれ私の二十歳の祝いにと
貴方が庭に立たずみ静かに
やせたその腕で土をかけた
青年の樹よ青葉繁りてなお悲し
わびることさえなくなお悲し
- マイ・ボーイ
My Boy いつの日か この手を離れて
大空に逃げてゆく時は 黙っておゆき
My Boy さよならの言葉はいらない
心のおもむくままに 駆けてゆけばいいおまえがこの世に生れた あの日の空は
いつまでも 瞳の中にやきついて 消えないからMy Boy ふしくれたこの手で 今おまえの
そのほほに 触れておこう
おまえが気付かぬうちにMy Boy この胸の熱い高なりを
おまえに伝える法はないけれど 感じておくれ
My Boy この胸を力の限りに
その足で蹴って飛び上がれ あの日のあの空へ私はおまえのためだけに 生きてはいない
自分のために生きてそして 愛する人のためにMy Boy 傷つくことを恐れちゃいけない
つらくなった時は この空の青さを信じればいい私がこの世に生れた その日の空を
私の父もきっと忘れず 生きていたにちがいないMy Boy いつの日か この手を離れて
大空に逃げてゆく時は 黙っておゆき私がそうしたように 逃げておゆき
- 陽はまた昇る
夢を削りながら 年老いてゆくことに
気が付いた時 はじめて気付く空の青さに
あの人に教えられた 無言のやさしさに
今さらながら涙こぼれて 酔いつぶれたそんな夜陽はまた昇る どんな人の心にも
あゝ 生きてるとは 燃えながら暮すこと冬晴れの空 流れる煙 風は北風
鉢植えの紫蘭の花 朝の雨にうたれ
息絶えだえに ただひたすらに遠い窓の外
もしかして言わなければ 別離ずにすむものを
それでも明日の貴方の為に あえて言おう 「さよなら」と陽はまた昇る どんな人の心にも
あゝ 生きてるとは 燃えながら暮すこと春まだ遠く 哀しむ人よ 貴方を愛す
陽はまた昇る どんな人の心にも
あゝ 生きてるとは 燃えながら暮すこと春まだ遠く 哀しむ人よ 貴方を愛す
春まだ遠く 哀しむ人よ 貴方を愛す
- 去年(こぞ)の雪
右行けば遥かな空
斑雪の遠い道
左行けば吹雪の町
懐かしき灯りの家我足は右に向かい
我心左に向かう
あゝ せめて 道標だけ
示せ今朝の肩の雪父ならば大きな手で
抱きしめて荒く強く
父ならば笑顔のまま
投げ出しておくれ空へ我命君に授かり
我命夢に預けん
あゝ 今も後髪ひく
想い出の去年の雪あゝ 今も後髪ひく
想い出の去年の雪
- それぞれの秋
陽溜まりの坂道に立ちどまり
通りすぎる学生を見ていた
俺もあの頃はあんなふうに
きらきらと輝いて見えたろう
授業にも出ずに お茶を飲みながら
くだらない夢を話した
突然おこった不精ひげのおまえも
噂では苦労していると今も忘れられないのはあの時の言葉
幸せになろうなんて思っちゃいけない愛した女ひとりと 苦労を共に出来たなら
そんなささやかな人生も きっと悪くはない
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋たしか去年の初夏の頃
届いた一通の手紙には
旅好きなあいつのおふくろから
痛々しいほどの細い文字
ある雨の朝 見知らぬ町で
自ら命を終えたと
母に残した一行の言葉
悲しみだけが人生今も忘れられないのは あいつの口ぐせ
人は自分の死に場所を捜すために生きるささやかに 生きている友達の
人生とは 一体何んだろう
あざやかに死んだ 友達の
人生とは、一体何んだろう
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋今では二人の思い出も 忘れかけるほどの毎日
ふと立ちどまる道端に 悲しいほど赤い落日夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋
- 残照
足早に暮れてゆく 秋の夕陽のいさぎよさ
久しぶりに散歩する父と二人の遠回り
はるか昔にこの人の背中で聞いた祭りばやし
遠く聞こえて道の向うに目をやれば
影を落として小さなカラスが空を行く"人生は祭りのよう"何気なく貴方は言った
その後の淋しさにたえる勇気が出来ました
残り少ない祭りの夜は
せめて一緒にそばに坐って
酒でも飲んで同じ話を繰り返し
胸のページに書き写してすごしていよう哀しくて哀しくて 体全部が哀しくて
目頭が熱くなり思わず貴方を追いこした
見えていますかこれが貴方の 見えていますかこれが貴方の
夢を削った 夢をこわした背中です
震えているのはきっときっと・・・
震えているのはきっときっと・・・
- 昴-すばる-
一)目を閉じて 何も見えず 哀しくて目を開ければ
荒野に向かう道より 他に見えるものはなしああ 砕け散る宿命の星たちよ
せめて密やかに この身を照せよ我は行く 蒼白き頬のままで
我は行く さらば昴よ二)呼吸をすれば胸の中 凩は吠き続ける
されど我が胸は熱く 夢を追い続けるなりああ さんざめく 名も無き星たちよ
せめて鮮やかに その身を終われよ我も行く 心の命ずるままに
我も行く さらば昴よああ いつの日か誰かがこの道を
ああ いつの日か誰かがこの道を我は行く 蒼白き頬のままで
我は行く さらば昴よ
我は行く さらば昴よ